呼吸にまつわるトレーニングプール vol.1
上田久美子が立ち上げたプロジェクト・プネウマのワーク・イン・プログレスとして「呼吸=プネウマ」と「聞くこと」に意識を向ける市⺠参加型アートプロジェクト。「呼吸にまつわるトレーニングプール」は、⽣物たちとヒトが「呼吸=プネウマ」の溶け合った⼤気という海の中で一緒に泳ぐ練習場である。
公式website: http://kiac.jp/event/2999/
日時:2024/8/2~8/13 クリエーション
2024/8/14~8/16 実験室オープンデイ
会場:城崎国際アートセンター大ホール
オフィーリアが木から落ちて溺れる時、水中の微生物は死せる乙女を「ごちそうだ!」と歓迎し、木々は枝を伸ばして太陽光を奪い合い、地球は回り続ける。この重層的なパラレルワールドを語ろうとしない場合、演劇は、ヒトのエネルギーの発露にヒトだけが熱狂するヒト崇拝の儀式にも見える。
近代的自我が発明される以前のシェイクスピア作品や、ギリシャ叙事詩では、自然というマクロコスモスが登場人物のミクロコスモスと交わり合っている。でも現代に演出されるそれらの戯曲は、ヒトにクローズアップしたミクロコスモスのドラマとして矮小化されているかもしれない。ヒトの愛憎や正義や悪を描き出し人々に活力を与えてきた演劇は、本当のところ、世界に知をもたらし貢献してきたと言えるのだろうか?
この疑問を持った上田久美子は、至近距離から眺める人間社会と、俯瞰から眺める宇宙のバイオームを一つの物語に共存させる方法を模索し始めた。
このプロジェクト・プネウマのワーク・イン・プログレスとして、城崎国際アートセンターのアーティスト・イン・レジデンスに応募し、市民と一緒に、シェイクスピアの「オフィーリアの死」のシーンを城崎国際アートセンターのホールに出現させる実験を行った。
まず、城崎での滞在期間の前半には、デュッセルドルフを拠点とするアーティストmiuをはじめとして、国際的な演劇シーンで活躍するアーティストたちがプロジェクト研究員としてアイデアを出し、市民参加型ラボラトリー(実験室)の仕組みを検討した。
レジデンス最後の3日間は「実験室オープンデイ」と称して、実験室に市民の皆さんが加わった。実験の協力者になった人々は、人間ではない様々な役―バクテリア、虫、水草etc.―として作品の世界を構成した。 参加者は、踊る、セリフを言う、何かを表現する、ということではなく、聴いて、自分の身体を観察して、少し呼吸を変えて、そっと身体を動かすことで、ヒトとしての自分とは違う生命として、オフィーリアというヒトの死に立ち会うことを試した。
オフィーリアの世界にどんな生き物がいるのかより具体的に想像するために、城崎周辺の川で水を採取して、バイオリサーチャーの津田和俊がデータを用意した。
▪️主催
Projectumï
城崎国際アートセンター
▪️助成
日仏笹川財団
公益財団法人セゾン文化財団
▪️note記事
呼吸にまつわるトレーニングプーループロジェクトについて話しますー
上田久美子 ナビゲーションとテキスト
miu 音とシステム
島根県出身。国立音楽大学およびハーグ王立音楽院(オランダ)で、ソノロジー/電子音楽を学ぶ。主な活動は舞台作品、音響パフォーマンス作品、インスタレーションの制作及び上演、展⽰。異なる文化間や言語間、時代間で生じるコミュニケーションのずれやエラー、誤解や転化、記憶の仮想化などの現象を自作品の重要なモチーフと捉え「ある場所にいながら、その場所に属さない」人物や出来事の観察を制作の基軸としている。2014年よりデュッセルドルフ在住。https://milch-labor.com/(ドイツ語のみ)
竹中香子 演技とテキスト
2011年渡仏。16年フランス俳優国家資格を取得。パリと日本を拠点とし、俳優活動のほかレクチャーやワークショップも行う。主な出演作に『妖精の問題』『Madama Butterfly』(市原佐都子演出)、『最後の芸者たち』
(太田信吾演出)。映画『現代版 城崎にて』ではプロデュース、脚本、主演を担当し、同作品はゆうばり国際ファンタスティック映画祭2022にて優秀芸術賞受賞。24年初戯曲を執筆し『ケアと演技』を上演。現在、太田信吾監督最新作『沼影市民プール』で初の長編プロデュース。https://mill-co-run.com/
太田信吾 映像と演技
1985年長野生まれ。早稲田大学文学部卒、哲学・物語論専攻。初の長編ドキュメンタリー映画『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(2013)が世界12カ国で配給された。その他、監督・主演作に劇映画『解放区』(14)、ドキュメンタリー映画『想像』(21)、劇映画『現代版 城崎にて』(22)など。俳優としてはチェルフィッチュ『三月の5日間』香港公演(10)で初舞台。出演作にKAAT プロデュース『未練の幽霊と怪物』、彩の国
さいたま芸術劇場『わたしは幾つものナラティヴのバトルフィールド』など。
ガエル・サル 演技
パリのアクティング・インターナショナルとコンセルヴァトワール(10区)で学び、映画や舞台俳優として活躍。ロバート・ウィルソン『Jungle Book』(パリ市立劇場および国際ツアー)に数年にわたり出演。2017年よりユヴァル・ロズマンの数々の作品に出演。2021年にはモーラン・オレスの『Vers le spectre』に、2024年にはレオニ/マザリン・パンジョの『Je suis Gréco』に出演。現在、ユヴァル・ロズマンと共に25年秋に制作予
定の『Au nom du ciel』の執筆に取り組んでいる。
川村美紀子 ムーヴメントと演技
2011年から本格的なダンス活動を開始。14年初演の『インナーマミー』でトヨタコレオグラフィーアワード、横浜ダンスコレクションEX2015 にて受賞。16 年に渡仏し国立ダンスセンターを拠点に6 ヶ月間のレジデンスを行う。出演作としてLisa Spilliaert監督、吉本ばなな原作 映画『N・P』、市原佐都子演出音楽劇『バッコスの信女―ホルスタインの雌』、上田久美子新演出オペラ『道化師/田舎騎士道』、市原佐都子『弱法師』、川口隆夫『バラ色ダンス 純粋性愛批判』出演など。自身の書籍やオリジナルソング製作のほか、渡辺泰司とのユニット「異路派」、雑貨屋「川村産業」など多彩な活動を展開。https://kawamuramikiko.com/
津田和俊 バイオリサーチ
1981年、岡山県新庄村生まれ。環境や資源、サステイナビリティの問題に関心があり、工学やデザインを軸に領域横断的な取り組みをおこなっている。多様なアーティストやデザイナー、研究者との共同制作やワークショップ開発を進めると同時に、広く社会に共有することを試みている。京都工芸繊維大学未来デザイン・工学機構准教授、山口情報芸術センター[YCAM]専門委員。
中村友美 美術
舞台美術家、セノグラファー。1988年生まれ、新潟県柏崎市出身。舞台・ダンス・オペラ作品中心に活動。近年参加作品にオペラ歌劇『夕鶴』(演出・岡田利規)、Festival d’Automne à Paris 2022 贅沢貧乏『わかろうとはおもっているけど』。また劇場空間に囚われない地域等でのリサーチ型のプロジェクトやワークショップに参加、趣味は銭湯巡り。女子美術大学非常勤講師。
平野暁人 通訳・コンセプトアドバイス
翻訳家(日仏伊)。戯曲から精神分析、ノンフィクションまで幅広く掛けるほか、舞台芸術専門の通訳者としても活躍。加えて近年はパフォーマーとして国内外の舞台に出演しつつある。主な訳書に『純粋な人間たち』(英治出版)、『隣人ヒトラー』(岩波書店)、『「ひとりではいられない」症候群』(講談社)など。
関下景子 制作
公共劇場の制作者として海外作品招聘や市民講座、新作創作や若ダンサー向けのプロフェッショナル育成事業等、様々なプロジェクトの企画運営に携わる。2023年〜2024年にかけて、フランスの舞台芸術におけるエコシステムの調査をテーマに、仏アンジェの国立現代ダンス・センター(CNDC ‒ Angers)およびパリ(パンタン)の国立ダンス・センター(CN D)を拠点に様々な施設やフェスティバルを訪れながら研修を行う。
美術コンセプト協力・指導 稲井田将行(山中工務店)「帰庵」
https://www.sukiya-kyoto.com/kian/
城崎国際アートセンター(KIAC)
館長|志賀玲子
芸術監督|市原佐都子
館長補佐|小川⼀昭
プログラムディレクター|吉田雄⼀郎
地域連携ディレクター|橋本麻希
コーディネーター|與田千菜美
テクニカル|深田奏美、藤原海翔、垣添真央
事務補佐|安田恵里果 環境整備スタッフ|田村賢也 夜間管理スタッフ|貫田勘治、竹下光雄
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