新作(タイトル未定)
意図 上田久美子
私は46歳の日本人、出産経験はない。きっともうタイムリミットだろう。
出生率は世界的に凋落している。
母になった友人たちとは、いつのまにか距離ができた。
その小さいけれど鋭い痛みについて、私はユウコさんに出会うまで誰とも話さなかった。それは表現者にとっては散文的すぎるお喋りだと思い込んできたから。
「私たちを分断してるのは時間性なの」とユウコさんは言った。彼女は続けた。
「そしてあなたも、自分だけ速く進むことしか考えない容赦ない人間の側にいる。子供たちと私の、ひとところをぐるぐるまわっている時間を置き去りにして」
私は寂しく、ユウコさんは阻害され、私たちは異なる時間性を和解させるための場所を求めていた。でもどうすれば?
その問いからQuand le temps devient beautéは生まれた。
日仏二カ国を基盤にしたこのプロジェクトは、子どもを持つ女性と持たない女性のあいだの距離を出発点に、生殖する身体と生産する身体の葛藤を通して、現代の時間性を問い直すコレオグラフィックな作品だ。
作品はかつての日本の祝祭的な夕べの形式に着想を得つつ、現代都市の計測可能で線的な時間性に浸された人々を違う時間感覚へ入り込ませるイマーシブでデュレーショナルな祝祭として展開する。
作品のドラマツルギー、コレオグラフのメソッドはまだ検討中だが、一定時間のムーブメントと音楽のシークエンスを複数回繰り返す構造を試したい。未来へ向かう進歩はなく、非生産的な反復のようでいて毎回が異なっている循環的で可逆的な時間は、観客に子供時代の「今」への没頭を思い出させられるだろうか。この特殊な時間体験が身体に蓄積していくと、観客の身体とパフォーマーの身体、音楽家の集中力はどう変化し、影響しあう集団はどのような状態になるだろう?
全ての年齢の観客が、好きな時に訪れ、去り、戻ってくることができる。
生産的時間によって長く傷つけられてきた私たちの集合的な魂を癒すための、コミュニティ的な祝祭を私たちは立ち上げる。
現在の位置
現在このプロジェクトは、初期のリサーチを終えた段階だ。
フランス国立ダンスセンター(CND)とメナジュリー・ド・ヴェール(Ménagerie de Verre / StudioLab)からスタジオ提供を受け、親であることと、現在支配的な時間性との葛藤についてのインタビューを日仏の一般協力者を対象に2週間行った(2025年3月、12月)。
2026年の1月に1週間、初めてムーブメントと音楽を試し、観客配置のテストを行った。
これからは、作曲、振り付けの方法論をコラボレーターたちと模索し、ドラマトゥルギーの構成に取り掛かる。インタビューも対象者を広げて継続予定。
作品は、日本においては日本在住メンバーで日本バージョンを、フランスではフランス在住メンバーでフランスバージョンを構成すれば、移動が削減できてかつ複数の視点から同テーマを語れるかもしれない。
プロジェクトはフランスに本拠をおくCompagnie ProjectumÏと日本法人Projectumi、株式会社プリコグの共催によって運営されている。




